リザソベラーノとは?フィリピンが誇る女優の素顔とハリウッドへの挑戦
フィリピン芸能界で「最も美しい女優」と呼ばれてきた女性が、今やハリウッドの扉を叩いている。リザソベラーノ——本名ホープ・エリザベス・ソベラノ。その名を初めて耳にする日本人は多いかもしれないが、アジア全域、そして欧米のエンタメ業界でも静かに、しかし確実に存在感を放ち続けている女優だ。
彼女の軌跡は、単なるスター誕生の物語ではない。文化的なアイデンティティの葛藤、言語の壁、芸能界特有のプレッシャー、そして自分のキャリアを自らの手でつかみ直す決断——そのすべてが、リザソベラーノという人間をつくり上げてきた。
リザソベラーノのプロフィール:生い立ちと家族
リザソベラーノは1998年1月4日、カリフォルニア州サンタクレアで生まれた。父ジョンはフィリピン出身でパンガシナン州の人、母ジャクリンはカリフォルニア州サンノゼ出身のアメリカ人だ。つまり彼女は、フィリピンとアメリカという二つの文化を体内に持ちながら育ったことになる。
両親が幼い頃に別れたため、彼女は祖父母に育てられ、その二人を「ママとパパ」と呼んでいた。幼少期は「アメリカズ・ネクスト・トップ・モデル」を見てモデルに憧れを持つようになった。そして10歳になると父親の元へ行くためフィリピンへ移住する。
フィリピンのテレビ番組を見て演技に興味を持ち始めた彼女は、13歳のときにソーシャルメディアでスカウトされ、アーティストマネージャーのオジー・ディアスと出会うことになった。言葉の壁もあった。フィリピノ語をまだ習得中の少女が、フィリピン芸能界という競争の激しい世界へ飛び込んだのだ。
芸能界デビューと初期キャリア
クソン市に移り住んだリザは13歳でモデルとしてキャリアをスタートさせ、2011年のファンタジーアンソロジーシリーズ「Wansapanataym」でテレビデビューを果たした。当時、業界内での彼女の立ち位置はまだ小さかったが、その潜在能力はすでに周囲の目に留まっていた。
2013年には、青春ロマンティックコメディ「Must Be... Love」やコメディドラマ「She's the One」など複数の映画で脇役を演じた。主役ではない。それでも彼女は画面に映るたびに観客の視線を引きつけた。
2014年、ロマンティックドラマシリーズ「Got to Believe」のシーズン2でブレイクスルーを迎え、ダニエル・パディジャとカトリン・ベルナルドの共演作でヒロインの恋愛相手役を演じた。これが彼女の名前をフィリピン全土に広めるきっかけとなった。
「Forevermore」で国民的スターへ
リザソベラーノが国民的な知名度を確立したのは、2014〜2015年放送のテレビドラマ「Forevermore」でのリード役だ。このドラマでエンリケ・ギルとの"LizQuen"スクリーンカップルが誕生し、フィリピン芸能界に一大ブームを巻き起こした。
彼女が演じたのはイチゴ農場で働く女性で、ギルが演じる男性キャラクターが彼女の農場で働くことになるという設定だった。ドラマは大ヒットし、リザを一躍スターに押し上げた。この役で彼女は「最も期待される新人女優賞」を受賞している。
この作品が単なるヒット作以上の意味を持つのは、リザが言語的にも文化的にも「外部者」であった状況を乗り越えて国民の心をつかんだからだ。フィリピノ語に苦労しながらも、スクリーンの上での彼女の自然な演技はそれを感じさせなかった。
快進撃の映画キャリアと「世界一美しい顔」の称号
2015年、リザとエンリケ・ギルは「Just the Way You Are」と「Everyday I Love You」の2本の映画で共演。どちらも興行的に大成功を収めた。
2017年12月、米国の映画情報サイト「TC Candler」が発表した「世界で最も美しい顔100人(2017年)」ランキングで、リザソベラーノが第1位に輝いた。3度目のランクインとなったこの年、2015年の6位、2016年の2位を経て、ついにトップに立った。この快挙はフィリピン国内のみならず世界中で大きな話題を呼んだ。
同年公開の映画「My Ex and Whys」では元交際相手と仕事をする女性ブロガーを熱演し、彼女の最高興行収入作品となった。この作品でボックスオフィス・エンタテインメント・アワードの「Box Office Queen」を受賞している。
FAMASアワード、スターアワード、6つのボックスオフィス・エンタテインメント・アワードを含む多数の賞を受賞。タトラー・アジアは2022年と2023年、彼女をアジアで最も影響力ある人物の一人に選出した。
新たな挑戦:Netflixと声優デビュー
恋愛映画の女王として君臨しながらも、リザは変化を渇望していた。同じ役柄を繰り返すことへの疑問。それが次のステップを促した。
2021年、Netflixアニメシリーズ「Trese」で声優としてデビュー。超自然的な事件を解決する探偵が主人公の作品で、リザはそのタイトルキャラクターを担当した。批評家の反応は賛否が分かれ、フィリピン・スターのキャスリン・ルミットは彼女の演技に「ダイナミズムがある」と評した一方、批判的な見方もあった。それでも彼女がチャレンジした事実は消えない。
2018年にはファンタジーシリーズ「Bagani」で勇敢な戦士を演じ、スタントをこなしながら中国武術「武術(ウーシュー)」を習得した。ラブストーリーの枠に収まろうとしない、その貪欲な姿勢が際立っていた。
ハリウッドへの決断と「Lisa Frankenstein」
2022年、リザはハリウッドでの俳優キャリアを追求するためカリフォルニアに戻り、2024年のホラーコメディ映画「Lisa Frankenstein」に出演した。フィリピンのトップスターがアメリカに「出稼ぎ」に行く——そう簡単に片付けられるほど単純な話ではなかった。
監督ゼルダ・ウィリアムズが手がけたこのホラーコメディの脇役を知った彼女は最初は迷いを感じたが、最終的にはウィリアムズ本人に背中を押されて役を勝ち取った。脚本は「自分が夢見ていたすべてが詰まった」ものだと語っている。
リザが演じたのはタフィという人気者の継姉妹役。多くの批評家が彼女を「シーンを盗む存在」と絶賛した。ハリウッドデビューとして、これ以上ない好スタートだった。
リザは2024年にスクリーン・アクターズ・ギルド(SAG)に加入した。これはフィリピン出身女優にとって象徴的な節目でもある。
次なるステージ:今後のプロジェクト
リザは次作として、ランディ・リベイの2019年小説を原作とした青春ドラマ映画「Patron Saints of Nothing」に主演することが決まっており、ブランドン・ペレアとジョン・ジョン・ブリオネスとの共演が予定されている。
さらに2025年10月、ハリウッド・リポーターはリザがドリームワークスのアニメーション映画「Forgotten Island」でライサという主要キャラクターの声を担当することを発表した。この映画は2026年9月25日に公開予定だ。声優としての経験が、ここでも生きてくる。
社会活動家としてのリザソベラーノ
スクリーンの外でも、彼女の発言は注目を集め続けている。リザはジェンダー平等、女性の権利、そしてメンタルヘルスについて積極的に発言する人物だ。
2020年には女性の権利団体「ガブリエラ」と連携した活動を行い、オンライン上での批判を受けながらも信念を曲げなかった。スターとしての立場よりも、一人の人間としての声を優先する姿勢は、彼女のファンからの支持をさらに厚くした。
心理学を学んでおり、メンタルヘルスカウンセラーになることを考えていたこともあるというエピソードは、彼女の人間的な深さを物語っている。
ブランドアンバサダーとしての影響力
メイベリン、Samsung Galaxy Z Flip 3、セタフィル、GCash、ジョリビー・フーズ・コーポレーションなど、多数のブランドのスポークスパーソンを務めている。またデジタルバンク企業「Maya」のチーフ・アドボカシー・オフィサーも務めている。
2023年には韓国スキンケアブランド「デオプロス」のフィリピン初のブランドアンバサダーとなった。韓国俳優ソン・ガンとともにブランドを代表し、フィリピン市場でその知名度向上に貢献した。美しさを武器にするだけでなく、ビジネスパートナーとしての信頼も着実に積み重ねている。
まとめ:リザソベラーノという存在の意味
彼女が主演女優として関わった映画は世界で10億フィリピンペソ(約1730万米ドル)以上を稼ぎ出しており、フィリピン映画史上最高興行収入俳優の一人として名を連ねている。
リザソベラーノは、「美しい顔を持つ女優」という枠を自分自身で打ち破ってきた。フィリピンのロマンス映画界から国際的なホラーコメディへ、テレビドラマからNetflixアニメへ、そしてドリームワークスの声優へ。その変化の幅は、単なるキャリア転換ではなく、一人の女性が自分の可能性を信じ続けた証だ。
日本ではまだ「知る人ぞ知る存在」かもしれないが、ハリウッドという舞台が彼女を世界中の観客の前に押し出しつつある今、リザソベラーノという名前はこれから先、もっと多くの人の記憶に刻まれていくだろう。